2012年8月13日月曜日

オリンピックと草レース

2012ロンドンオリンピック、その最終日にMTBクロスカントリーオリンピック(XCO)が行われました。
男女選手共に、最高の努力の積み重ねを経て、ロンドンの本番で最高のパフォーマンスを発揮、そして過去最高位を記録しています。

走りも、それは素晴らしいものでした。

その取り組み、結果には最大の賞賛を送りたいと思います。

反面、日本人ではこれ以上ないほどに高いレベルに到達した両選手を持ってしても、まだまだ世界トップとの差もあるのも事実でもあります。

もちろん両選手は、考えられるかぎり最高の努力で世界トップへの過程を辿っています。
その甲斐あり、両選手が確実に縮めてきていますが、もしこの両選手がその差を埋め切れないとなると、世界トップに到達する術はないのでしょうか。

その打開策はいくつか考えられうと思いますが、ひとつの道を、オリンピックと同じMTBの草レース、宮城県の片田舎で開催された東北MTBフェスティバルで垣間見ました。


このイベントは、今年開催のローカルなレースで、MTBを楽しむスタンスでなにか東北の支援の一助にならないかという思いから始まりました。
一回目であり、お盆休みのまっただ中であり、また関東など人口集積地から遠いこともあり、多くの参加者を見込むには厳しく、大きなイベントを目指して行うものではありませんでした。

かくして、宮城県を中心とした福島、山形という地元参加者の比率が高かったですが、中にはイベントの趣旨に共感して、東京、関東、遠くは大阪からも参加がありました。

参加者を見込むべく乱立するロードバイクのイベントと違って、MTBイベントは減少しています。
開催場所、参加者の数、予算、ノウハウ、いろいろと実施に関してクリアしなければならない課題が多いのです。
商業ベースで採算がとれなければ、経済的に参入はありませんし、有志の手弁当ではいつか気持ちが切れてしまうという限界もあります。

このイベントの実行委員は少数で、しかしながら多くの協力を得たこともありますが、ノウハウ主導で、見事切り盛りしていました。

その結果が、この写真です。


大会二日目で、すべてのコンテンツが終わったあとでの集合写真です。楽しんだ、満足そうな笑顔が多く並んでいます。
そのなかには、とても多くの子供達の笑顔、笑顔。


男子代表選手は、北海道出身で夏場に行われる草レースを幼少期から走っており、そこからロンドン、今の世界レベルへと登っています。

草レースがなかったら、幼少期からMTBに慣れ親しみ、楽しんでいなければ今日のパフォーマンスはなかったでしょう。

オリンピック選手を応援することは画面に向かって叫ぶだけではなく、オリンピック選手が世界トップに、メダルに近づくための道、それを支えてあげる事が、とても身近なところにあるのかもしれません。

この草レースもそうです。

参加者一人ひとりが、楽しんでくれることで、草レースが存在できて、そこで一緒に楽しんだ子供達がいつかオリンピック選手へとなるチャンスとなるのかもしれません。


今回のレースには下り系、テクニック系では、自分にとっても憧れの存在である、YANSさんも一緒になって草レースを盛り上げてくれていました。

自分がMTBを始めた20年前には、すでに日本のトップで世界トップクラスの走りをして、結果も残していたという、ある意味往年のMTBファンには神のような存在なのです。

その方と、子供スクールも一緒に行いました。

それぞれ2つのコースに分かれておこないましたので、横目にしか内容を拝見できませんでしたが、夜の熱い語り合いでも確認できましたが、同じような考え方、アプローチをされていてとても嬉しく、自信になりました。

どうしたら安全に、自転車の基礎を身につけられるか、大人のように理論と思考から上達過程を探るのではなく、カラダを使ってダイレクトに上手くなる動きを、感覚を身に着けてもらえるように、メニューにアイディを盛り込んでいきます。
もちろん、飽きずに楽しく取り組んでもらえるようにゲーム性を盛り込んだり、積極的にとりくむ自主性を引き出せるように工夫もしていきます。


草レースというMTBに、レースに親しめ、そして、子供の頃から、世界の、日本のトップに触れて、上達のきっかけをもってもらう、そんな環境を用意出来れば、オリンピック選手を目指す母数を増やせるのです。

母数が増えれば、そこから伸びゆく選手も増える、どんどん今の両選手に続くような選手が育って、やがて誰かが世界のトップに到達できるはず。

その母数が多いのがヨーロッパなのでしょう。

少年期、青年期、成人期、とそれぞれの過程において必要な策は、それぞれありますが、草の根レベルにおいてはこの草レースの存在が大きいのです。

自分の応援するオリンピックのスポーツに出る、イベントに参加する、そこで楽しむことが身のある応援になる、選手を生む力になるかもしれません。

子供はイベント運営の予算をまかなえませんが、子供の参加種目のあるイベント、草レースに積極的に大人が参加することで、その機会を育て守ることになるのです。

オリンピックという大舞台で花を咲かせるためには、種を巻き、根を張るように長い年月、時間をかけて大樹を育てなければなりません。

その土壌を作るのは、そのスポーツに関わる、関われるすべての人のほんの些細な、しかしながら確実なプラスの行動なのではないだろうか。

東北のMTB好きな皆さんの笑顔、行動、情熱をみてそう思うのでした。